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それから数時間後。大人しく空賊に捕らえられたジョセフ達は、空賊船の船倉に閉じ込められていた。 ジョセフ達をここまで運んできた船、『マリー・ガラント号』の乗組員達は自分達のものだった船の曳航を手伝わされているようだ。 ジョセフはデルフリンガーを取り上げられ、メイジ達は杖を取り上げられた。後は鍵を掛けてしまえば何も出来ない、という認識はおおよそ間違ってはいない。 だがジョセフは特に何か行動を起こすでもなく、酒樽や穀物袋や火薬樽が雑然と置かれた船倉で静かに寝転がっていた。 「どうするんだジョジョ! 空賊なんかに捕われてしまったんだよ、どうにかしないと!」 空賊に発見されてからこの方、徹頭徹尾徹底抗戦を唱えているギーシュが、船倉の中で唯一この状況を打開できそうなジョセフに詰め寄った。 だがジョセフは起き上がる素振りさえ見せず、寝転がったままギーシュを見やった。 「ここで暴れてもどーもならんじゃろ。まだわし一人だけが捕まったんならどーとなりとでも出来るが、お前達まで人質になっとったら正直どうもできんぞ。幾ら何でも五人も守りながら戦うだなんて器用なマネはわしにはできん」 杖を取り上げられたメイジが五人雁首を揃えたところで、足手まといにしかならないのはここにいる全員が理解していることである。 更に言えばジョセフの傷は包帯の下で波紋を流しているとは言え、まだ治療中である。今の傷の具合では戦いに必要なだけの波紋を練るのもやや厳しい。 そうなればジョセフは傷を癒す時間を得る為、黙って寝転がっているという次第だ。 (ッつーか今回はハイジャックとはなァー。つくづくそーゆー星の下に生まれとるんじゃよなァわしは) ほとんど他人事のように心の中で呟いたジョセフは、他の面々の様子を伺ってみた。 一番落ち着きが無いのはギーシュだ。 船倉の中で何か使えるものはないかと探した結果、火薬樽を見つけて何やら奇跡の逆転劇の台本を書いているようだが、あんなものをこんな場所で使えばどうなるか、については考えが至っていないようだ。後で鉄拳制裁混じりの説教をすることにした。 ギーシュの次に落ち着きが無いランキングに入賞したのはルイズだった。 こちらは大人しく自分の横にぺったり座ってはいるが、視線が落ち着き無く彷徨い続けている。 それに加えて暇を見つけては傷は大丈夫か痛くは無いか、と心配そうに尋ねてくる事も忘れない。 その度に大丈夫だこんな可愛いご主人様に心配してもらえて光栄だ、と笑って答えればルイズは顔を赤らめながら「そ、それならいいのよ」と顔を背けてしばらく黙る。 あんまり同じ受け答えだと向こうもそれに気付くので、頭を撫でたりちょっと腕を上げて力こぶを作って見せたりのバリエーションをつけることも忘れない。 第三位に入るのはワルド。ギーシュと同じく船倉の荷物を興味深く検分してはいるがギーシュとは違い、脱出目的のために見ている訳ではないようだ。 空賊の荷物はどんなものか、を見ている程度のものだろう。 第三位と甲乙つけがたいが、第四位はキュルケだった。彼女は生来の肝の太さを遺憾なく発揮し、看守の男を色仕掛けで虜にしようとしていた。 だが意外と看守の男は身持ちが固いらしく、キュルケの悩殺を楽しみはするもののそれに乗る様子はない。 そしてぶっちぎりの第五位は言わずと知れたタバサである。 空賊に発見される前から今に至るまで、取った行動と言えば『読書』一択。 ページを捲らずに読んでいるフリをしているとか、本が逆さまだということなど断じて無く、普通に本を読み続けている。 (それにしてもあのお嬢ちゃんはただモンじゃねェよなァ) ジョセフは内心で感心しつつ、包帯の上から腕を撫でて傷の具合を確認する。 まだ痛みはするが、死ぬほど痛いというわけではない。もう少し時間を掛ければ完治もするだろう。また呼吸を整え、波紋を練り込んでいると扉が開いた。 太った男がスープの入った大きな鍋と水差しの乗ったトレイを持ってやってきたのだ。 「メシだ」 扉の近くにいたジョセフが受け取ろうとするのを、男はトレイを持ち上げて阻止した。 「おっと、質問に答えてからだ」 その言葉にルイズが立ち上がった。 「言って御覧なさい」 「お前達、アルビオンに何の用だ?」 「旅行よ」 ルイズは腰に手を当てて、毅然と言い放った。 「トリステイン貴族が今時のアルビオンに旅行だって? 一体何を見物するつもりだい」 「さあね。考えてみたら?」 「随分と強気だな。トリステインの貴族は口ばかり達者なこった」 空賊の男は苦笑いすると、トレイをジョセフに渡す。それを船倉の中央に置くと、腹をすかせた全員がわらわらと寄ってきた。 「なんだいこれは、こんな粗末なものを食わせようと言うのか!」 具も殆ど浮いていないスープを前に、憤懣やるかたない様子のギーシュだが他の面々は黙ってスプーンを手に取っていた。 「文句があろうがなかろうが食っとけ。腹が減ってヘバっとったらマヌケもいいとこじゃ」 そう言ってジョセフが最初にスープを飲み、口の中で転がしてから飲み込んだ。 「お、けっこう旨いぞ。ヘンなモンは入っとらんようじゃ」 その言葉に全員がそれぞれスープを飲むが、すぐに飲み終わってしまうと再びやることが無くなった。 また時間を持て余そうとした時に、ジョセフが不意に口を開いた。 「なあ。こんなにヒマなんじゃしちょいと賭けでもせんか」 壁に凭れ掛かって脚を組みながら、泰然とした態度で船倉を見渡す。 使い魔の言葉に眉を顰めるのはルイズだった。 「ちょっとジョセフ、こんな時に何を言ってるのよ」 だがジョセフは主人の言葉を意にも介さず、船倉にいる全員に向けて言葉を続ける。 「なあに、とても簡単な賭けじゃよ。誰が乗る?」 ニヤリと笑うジョセフの言葉に、悠然と立ち上がるギーシュ。 「いいだろう、だがどういう賭けかを聞いてから乗るか反るかを決めてもいいんだろう?」 「ああ構わん。他に乗るヤツぁおらんか?」 ワルドは興味深そうに見ているだけで立ち上がらないし、タバサは我関せずと読書を続行している。 そしてルイズは頬を膨らませながら腕を組んで、『こんな時になんて不謹慎な』という態度を崩していない。 残った一人であるキュルケは、そんな一行の様子を見てやれやれと立ち上がった。 彼女としてはこういうイベントがあれば参加したいというのもあるが、ジョセフの持ちかけた賭けに興味をそそられたのが最大の理由であった。 「じゃあ私もその賭けに参加させてもらおうかしら」 「グッド!」 ジョセフがニヤリと笑って親指を立てる。 「で、賭けの対象はなに? それを聞かせてもらわないと話が始まらないわ」 早速すすすとジョセフに近付いたキュルケは、ジョセフの前に座り込んで聞いた。ギーシュも貴族然とした優雅な足取りでジョセフに歩み寄った。 他の面々はそれでも興味を引かれて聞き耳を立てることとなった。 「んじゃ賭けを発表するぞ。賭けの対象は『この船の主が空賊か否か』じゃ!」 船倉の中で呆気に取られなかったのは、ジョセフとタバサ、そしてワルドくらいのものだった。 しばらく妙な雰囲気の沈黙が漂ったが、それを打ち破ったのはギーシュだった。 「は……はははははは! なんだいジョジョ、何やら随分と落ち着いてると思ったら何の事は無い、一番混乱しているのは君じゃないか! いきなり何を言い出すかと思ったが、正直僕は君の正気を疑ってしまってるよ!?」 いかにも最高の道化師を見たかのような破顔の笑みでジョセフを指差して笑うギーシュ。 聞き耳を立てていたルイズも、あちゃあ、と言わんばかりに顔に手を当てて眉間に深く皺を寄せていた。 「で、ダーリンはどっちに賭けるの?」 しかしキュルケはチェシャ猫のように笑いながら、さも愉快げに問いかけた。 ジョセフは余裕めいた笑みを全く崩さず、二人の貴族に下向けの掌を緩やかに見せた。 「わしが賭けるのは、お前達の後でいい。お前達の反対に必ず賭けよう。空賊だと賭けたらそうでない方に、そうでない方なら空賊だと言う方に賭けよう」 「そんな賭けでいいのかい? じゃあ僕は当然、空賊だ、という方に賭けるよ。賭け金はどこまで賭けたらいいんだい?」 勝ちを確信、どころか勝利を疑うこともせず、ギーシュは嬉々として上限を聞いた。 「幾らでも青天井で構わん。わしはそれに見合った代償を賭ける」 「そうか! じゃあそうだな……では僕は、100……いや、200エキューを賭ける!」 120エキューで平民一人が一年間暮らせるだけの金額だというのに、それを易々と超える金額を提示するギーシュ。 「ほう太っ腹じゃな。負けたらきちんと払ってもらうぞ」 「なあに、こんな勝ちを譲ってもらえる勝負ならこれくらいのコトはしないとね!」 「ちょっとギーシュ! いくらなんでもジョセフに200エキューなんて手持ちがあるわけないでしょ!?」 ルイズが慌てて二人の間に駆け寄るが、ギーシュは芝居がかった動作でルイズに指を突きつけた。 「おっとミス・ヴァリエール。使い魔の言葉は主人の言葉だということでもある。もしジョジョが賭け金を払えないというのなら、君に払ってもらってもいい……が、それではつまらない。だから僕は、君ではなくジョジョから全てを取り立てることにしたッ!」 ゴゴゴゴゴ、と何やら特徴的な書き文字がバックに出ているようなポーズと顔でジョセフに視線を向ける! 「この200エキューの代償として、ジョジョ! 君に一年間、僕の執事をやってもらおうッッッ!!」 ドォーーーーz_____ン どこからか特徴的な効果音さえ聞こえそうな勢いで言い放ったッッッ!! ジョセフは無論、口端をこれ見よがしに大きく吊り上げて叫び返すッッッ!!! 「グッドッ! いいじゃろう、その賭け乗ったッ!!」 バァーーーーz_____ン 二人とも不敵な笑みを浮かべて視線をぶつけ合えば、ドドドドド、と音が聞こえそうなすさまじい緊迫感が二人の間に流れた。 ルイズは懸命に叫びたててこの賭けは無効だ主人が同意してないから成立しない、と言っているが、この二人は聞き入れる気配など微塵も無い。 やがて愉快げな笑みのまま、ジョセフはキュルケに視線を向けた。 「で、キュルケ。お前はどっちに賭けるんじゃ?」 問われたキュルケは、赤い唇を褐色の指先で色っぽく撫でて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 「あたしは、ダーリンの賭けた方に乗るわ」 「ミス・ツェルプストー! 君まで僕に200エキューをただで渡すというのかい!?」 笑いが止まらないとは正にこの事だろうと言う満面の笑みで、ギーシュはキュルケを見やった。 「いいわ、なんなら私もミスタ・グラモンの召使をやってもよくってよ?」 自慢の赤毛を両手でかき上げれば、ふわりと立ち上る女性の色香。 「あ、それはモンモランシーが誤解するから本気でやめて」 「誤解させるつもりだったんだけど」 素で返されたのでキュルケも素で返す。 「じゃ、私も200エキューをベットするわ。それでいいわね」 つまんないわね、と唇をちょっと尖らせてから、ジョセフににまりと笑みを向けた。 「よし! ではわしは『この船の主は空賊ではない』に賭けるッ!」 この時点で賭けは成立した。 「んもう! 本当にどうして私の使い魔は主人の言う事を聞かないのかしら……!」 大きく天を仰いで嘆息しつつ、力が抜けたようにルイズは壁際に寄りかかった。 その時、再びドアが勢い良く開き、随分と痩せぎすの男が入ってきた。空賊はじろりと一行を見渡すと、ニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。 「おめえらは、もしかするとアルビオンの貴族派かい?」 敵意を持った沈黙と、この場にはそぐわない余裕めいた沈黙が空賊に答えた。 「おいおい、黙ってちゃ判らないだろうよ。でもそうだったら失礼したな。俺達は貴族派の皆さんのおかげで商売させてもらってるんだ。王党派に味方しようとする酔狂な連中を捕まえたら、それもまた商売になるって寸法だ」 「じゃあ、この船はやっぱり反乱軍の戦艦なのね」 ほら見ろ、と言わんばかりにギーシュがジョセフに笑って見せた。 「いやいや、俺達は別に雇われてるワケじゃねえ。あくまで対等に協力しあってるだけだ。ま、お前らにゃ関係のないことだがな。で、どうなんだ? 貴族派か? それならちゃーんと港に送ってやるよ」 ねめつけるような空賊の視線に、ルイズはあからさまな怒りの視線をぶつけながら立ち上がった。 「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか! 寝言は寝てから言ってほしいものだわ! 私は誇り高きアルビオン王党派への使いよ、まだあんた達が勝ったわけじゃないんだからアルビオンは王国だし、正当なる政府はアルビオン王室よ!」 凛とした態度を崩さずに、怯えも恐怖も見せずに言ってのける。 「私はトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使だということよ! だから大使としての扱いをあんた達に要求するわッ!」 ギーシュは今にも顎が外れそうなほど口を大きく開けて、叫んだ。 「きっ……君は大バカか、ミス・ヴァリエールッ!?」 「誰がバカよ! 命惜しさに誇りを捨てて空賊風情に媚を売るだなんてマネを易々とするほうがよっぽどバカだわ!」 ギーシュに向き直ったルイズは、躊躇うことなく怒鳴った。 「それはそうだが、時と場合を選んでくれないか! 君がどういう行動をしようが勝手だがね、それに僕たちまで巻き込むのはやめてくれ!」 「うるさいわね! ならアンタは貴族派ってことにすればいいじゃない!」 「何を言うかミス・ヴァリエール! このグラモン元帥の四男たる僕に、アンリエッタ王女の信を裏切る真似をしろとでも!?」 ムキになって言い返すギーシュを見たキュルケは、呆れた顔で二人を見た。 「これだからトリステインの貴族は……。どうしてこんなに口だけ達者なの?」 頭痛を感じ始めた額に手をやって、やれやれと首を振った。 そんな様子を見ていた空賊はやがてさも楽しげに笑った。 「正直なのは美徳だろうが、お前達ただじゃすまねえぞ」 「あんた達なんかに嘘ついて頭下げるくらいなら、死んだほうがマシよ!」 断言するルイズに、ジョセフが立ち上がると主人に近付いていった。 何をする気か、と空賊も含め、船倉にいる全員の視線を集めたジョセフは、ルイズの横に近付くと、不意に帽子を脱いでルイズの頭に被せ、その上から力強く撫で回した。 「よく言ったッ! よく言ってのけたルイズッ!」 「え、あ!?」 突然のことに真っ赤になりながら、されるがままに頭を撫でられるルイズ。 「そうでなくっちゃな、それだからわしの可愛いご主人様なんじゃよなッ! いいぞルイズ、流石わしのご主人様じゃッ!」 かか、と満面の笑顔のジョセフはそれだけに留まらず、膝を折ってルイズと視線を同じ高さにすると、頭を撫でる手で主人の顔を引き寄せ、頬ずりまでして見せた。 ついに気が狂ったか、と考える者もいたし、はいはいバカ主従バカ主従、と呆れを隠さない者もいた。 「……頭に報告してくる。その間に遺書の文面でも考えてな」 余りの展開に気圧された空賊は去っていった。 「……ところでミス・ヴァリエール。僕達はもう破滅だと思うんだが」 大きく溜息をついて肩を落とすギーシュに、ルイズは毅然と言葉を掛けた。 「最後の最後まで私は諦めないわ。地面に叩きつけられる瞬間まで、ロープが伸びると信じるわ。――それに、私にはジョセフがいるんだもの」 帽子を被せられたまま、躊躇わずに断言したルイズの頭が再び大きな掌で撫でられた。 「あのねえ……ジョジョの手は君がとっくにリザーブしてるじゃないか。僕達はどうしろって言うんだい。せめて嘘くらいついてもバチは当たらないだろう」 もはや死を覚悟し始めたギーシュに、それでもルイズはきっぱり言い切った。 「それとこれは話が別よ! 嘘なんてつけるもんですか、あんな連中に!」 はああ、と大きく溜息を吐いたギーシュは、もはや問答は無駄だと判断して次の言葉を接ぐ事を諦めた。 ワルドもルイズに近付こうとしたが、ジョセフの凄まじい気迫(ワルド以外には欠片も感じさせなかった)に気圧されて近付くことができなかった。 やがて程無くして扉が開いた。先程の痩せぎすの男だった。 「頭がお呼びだ」 To Be Contined →
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魔法学校学院長室、ドッピオは決闘をしてからたまにここに来たりします 点前では使い魔の中で不思議な力を使うという噂が広まり学院長自らが調べるためと言うものですが ドッピオと学院長オスマン自身はここにとっての異世界、地球の話をしていることが多いのです 最初にドッピオの不思議な力、スタンドについても 「まあわしらには見えんし悪用さえしなければの。ただしまた決闘があるなら直接、貴族をそれで殴るのは勘弁しとくれ」 などといってお仕舞いでした 今日もまた異世界についての話をしていますが主だった事が話しきったので会話は弾みません 「おお、そうじゃ。お主の世界の人間がおったかもしれん」 会話を弾ませようとオスマン氏がとても重要なことをさらっと言いました 「そうですか・・・って、ええ?!」 さらっと言われたもので聞き逃しそうになりましたがそんな重要なことは聞き逃せません 「どこだかは知らんが「元の世界に帰りたい」と言ってた者がおったんじゃよ。おそらくお主と同じ世界だとは思うのじゃが」 「その人は今どこに?」 「死んだよ・・・。わしを助けた時には酷いケガでの、死ぬ間際まで元の世界に帰りたいとうわごとのように繰り返しておった・・・」 「助けた?」 「・・・ちいっとばかし爺の昔話に付き合ってくれるか?」 「もう30年も前の話なのかのう・・・ ある日わしは森にとある秘薬の材料を探しに行っていたんじゃよ しかし途中ワイバーンに襲われたんじゃ 死にそうだったところにその者が一撃でワイバーンを粉砕して助かったんじゃが」 「・・・・・・・」 「そのときにワイバーンを倒した一撃の反動が決定打になったのかその後は先に言ったとおりじゃ」 「すいません。いやな思い出を話させてしまって」 「なに言っとるんじゃ。爺に遠慮は不必要じゃよ」 そう言ってオスマンは紅茶を手に取った。話の最中にミス・ロングビルがおいてくれたものだ ドッピオも紅茶を口につけて話の一区切りを入れていた 「いただきます」 紅茶に口を付け一口飲むとドッピオは考えを巡らせ質問します 「なにか遺品とか残ってないんですか?」 「うむ、「破壊の杖」と言う彼の所持品だったものがある…」 ガシャン・・・ 破壊音はミス・ロングビルのポットを落とした音でした 「し、失礼しました。すぐに掃除を」 動揺しているのかその動きには落ち着きが無かった 「彼がわしを助ける時に使った魔法の杖らしきものなんじゃが・・・ 余りの破壊力の為この学院長室の下にある宝物庫にしまってあるのじゃよ」 「見れませんか?」 「鍵なくしちゃって・・・ゴメンネ!!」 手を合わせ片目を瞑る500歳にカップを投げたくなる衝動を押さえるドッピオでした 「魔法で何とかならないんですか?」 「スクエアクラスのメイジ数人は欲しいからのぉ・・・だがもしかしたら・・・」 「何か名案があるんですか?」 「壁をぶち抜けばいけるかも?」 「やっていいならやりますけど・・・」 キング・クリムゾンのパワーなら可能と考えたドッピオの考えは 「絶対ダメ!!」 両腕でバッテンを作った爺にさえぎられてしまうのでした 「なら、言わないでくださいよ。でもまあ、魔法が使える杖なんか僕の世界には存在しないから関係ないですね」 そう言いドッピオは紅茶を飲み干します。出された以上余す訳にはいきません 「お世話になりました。また来る時は有力な情報をお願いします」 「まぁそう焦るな若いの。また来い」 「仲が宜しいのですね」 ニッコリ微笑みながらオスマンに紅茶のお代わりを注ぐロングビル 「ほっほっ、なかなかおもしろいやつでのぉ。あいつと話していると若い頃を思い出すわい」 長い髭を触りながら楽しそうに話すオスマン 「それは良いことですね、オールド・オスマン。しかし人のお尻を触りながら言っても格好良さは三十分の一ですよ」 「痛て!!」 秘書にセクハラを軽くあしらわれているオスマンには学院長としての威厳もクソもありませんでした 9へ
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朝食を食べ終えたルイズとジョニィは教室に入った。 石造りの教室にはたくさんの生徒と、様々な使い魔がいた。 生徒たちは二人が教室に入るとゼロがどうとか平民がどうとか言いながら笑い始める。 笑われてるみたいだけど、とジョニィが小声で聞くがルイズは嘲笑を無視するとそのまま席に向かっていった。 「ルイズ。一つ聞きたいんだけど…。なんだい?そのゼロって。朝も呼ばれてたよね?」 「あんたには関係ないわよ」 ルイズは不機嫌な声で答えると席の一つに腰掛けた。ジョニィも黙って隣に座る。 ちょうどそこで扉が開き、中年の女性が入ってきた。 「皆さん。春の使い魔召還は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのが楽しみなのですよ」 そう言いながらジョニィに視線を向ける。 「おやおや、また変わった使い魔を召喚したようですね、ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズがジョニィを見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ!召喚できないからってそのへんの平民を連れてくるなよ!」 一人の小太りな生徒がゲラゲラと笑いながら立ち上がった。なぜか彼の体には黄金長方形を見ることができない。 「違うわ!きちんと召喚したもの!ミセス・シュヴルーズ!かぜっぴきのマリコルヌに侮辱されました!」 「なんだと!?オレは風上のマリコルヌだ!」 二人が熱くなり始めたところでシュヴルーズは杖を振った。すとん、と二人が席に着き、ついでに笑っていた生徒達の口に粘土が押し付けられる。 まるでスタンド能力だ。ジョニィはあらためて魔法の凄さに感心した。 授業は滞りなく進行した。 内容は系統の説明やクラスなど基礎的なものらしく、ほとんどの生徒達はつまらなさそうに聞いている。 だが元の世界に戻る唯一の手段である魔法を学ばなくてはいけないジョニィは真剣に授業を聞いていた。 魔法初心者の彼にとって授業が基礎から始まるのはありがたかった。 シュヴルーズは『土』系統の魔法を教えるらしく、さっきから何度も『土』系統の魔法の重要さを説明している。 あまりの必死さに生徒達は若干引いているのだが。空気読めよ。 授業が進み、いよいよ実践となったところで唐突にルイズが話しかけてきた。 「ジョニィ。あんた…魔法も使えないのにそんな真剣に聞いてどうするのよ」 「だから言っただろ。僕には帰ってやらなきゃいけないことがある。そのためには魔法でもなんでも学んでやるさ」 「あのねえ…帰る方法なんてないって言ったじゃない。それに…」 「ミス・ヴァリエール! 授業中の私語は慎みなさい!」 そんな風に喋っているとシュヴルーズに見咎められてしまった。 「は、はい!すいません…」 「お喋りするほど余裕があるのなら、『錬金』はあなたにやってもらいましょう」 シュヴルーズがそう言って机の上の石ころを指差した瞬間、教室の空気が変わった。 真っ先にキュルケが立ち上がり反対する。 「先生!危険です!」 「なぜです?失敗を恐れていては何もできませんよ」 他の生徒達からも続々と反対の意見が上がるがシュヴルーズはまったく聞く耳を持たない。 一方、ルイズはこれはチャンスだと思った。 どうもジョニィは使い魔としての自覚がないらしい。 自分に対する尊敬とかそういう気持ちが微塵も感じられない。タメ口だし。 そんな彼がさっきから一所懸命魔法を学んでいるのだ。 ここで一つ魔法でいいところを見せればジョニィも見直すことだろう。 (この先100年間は二度と挑んで来たいと思わせないようにご主人様との力の差を見せてあげるわッ!) 「やります」 そう言ってルイズは立ち上がり、颯爽と教室の前へ歩いていく。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」 にこっと笑いかけるシュヴルーズに頷くと一呼吸置いてから呪文を唱える。 「承太郎さん!あなたの『スタープラチナ』だ!」 「まずいぜ…!もう少しだけ離れねーと…!」 「『魔法』を使わせるなーーッ!!」 「いいや限界だ!隠れるね!『今だッ』!」 「射程距離5メルトに到達しています!S・H・I・T!」 生徒たちが一斉に慌て始める。 ジョニィはルイズの実力を見るいい機会だと呑気に見ていたが、前の席の生徒が机の下に隠れるのを見てイヤな予感がした。 何かヤバイと思った瞬間、教室が光に包まれたのだ! 「うおおッ!?ジャイロォォーー!?石ころが「爆発」したッ!?」 ジョニィはルイズがなぜ「ゼロ」なのかをやっと理解したのだった。 めちゃくちゃになった教室の片付けが終わったのは昼休みの前だった。 罰としてルイズ一人で片付けを命じられてしまったため時間がかかってしまったのである。 もちろんジョニィも手伝った───というかほとんどジョニィがやったと言ってもいいだろう。 新しい窓ガラスを手配したのもジョニィだし煤だらけの教室にモップをかけたのもジョニィだ。 ルイズは教室の隅でいじけてただけみたいなもんである。 「ルイズ…僕のほうは終わったんだが」 「………」 無言。気まずい。 どうしたものかとジョニィがしばらく悩んでいるとルイズが口を開いた。 「…あたしがなんでゼロかあんたにもわかったでしょ」 そう呟いた。明らかに落ち込んでいた。 そしてなぜかその姿には見覚えがあった。 ───いいところを見せるどころか恥を晒してしまった。 きっとゼロの意味を知ってジョニィもわたしを嘲り笑う。 そして見捨てる。役立たずと。誰からも認められない「ゼロのルイズ」と。 そう思うと悔しくて泣きたくなってきた。 そしてついジョニィにキツく当たってしまう。 「まあ、君の実力はだいたい解ったよ。あの爆発の威力はスゴかった」 「…言いたいことがあるならハッキリいいなさいよ!笑いたいなら笑いなさい!」 「…?ハッキリ言ってるじゃないか。君の実力もゼロの理由も理解した。別に僕は笑ってないだろ」 ゼロという言葉に反応してルイズはキッとジョニィを睨みつける。 「そう言って…きっと心の中では笑ってる!どんなに努力しても誰からも認めらない! 誰からも見捨てられる!わたしを「ゼロのルイズ」だって!」 ルイズは半分涙声になりながら続けた。 そこでジョニィははっとした。 先ほどルイズに見た誰かの姿は───僕だ。 魔法が使えないせいで誰からも認められない、そう言って一人ぼっちでいるルイズの姿は 歩けないせいで暗い病院で一人で絶望していたあのころの自分を思い出させた。 誰も関心なんか払わない。みんな見捨てる。観にさえも来ない。それが僕の進んでいる『道』 そう思っていた自分にそっくりだった。 ジャイロはそんな僕の限界を打ち破ってくれた。 ならば彼女にも───「何か」が必要なのではないか。 自分の限界を打ち破る、無限へと続く黄金の回転のような「何か」が。 「勉強もした!練習もした!それでも…できなかった!貴族なのに!メイジなのに! 魔法が使えないメイジなんて誰からも認められるわけがないわ!わたしは…わたしは!」 今まで溜め込んできたものを必死に吐き出すルイズの言葉をジョニィは遮った。 「『できるわけがない』」 「え…?」 「他の誰かができても自分はできるわけがない。いくら努力したってできるわけがない。君は今そう思っている。だから限界を感じている」 ジョニィはサンドマンとの戦いを思い出す。自分もそう思っていた。黄金の回転なんか『できるわけがない』と。 「でも本当に出来ないのか?僕の意見を言わせてもらえば君はあんな爆発を起こせるんだ。だったら…君が気付いてないだけで…何か小さなキッカケで…それを見つければできるのかもしれない」 ジャイロが自分の身を犠牲にしてまで教えてくれた黄金長方形を見つけた自分のように。 「そのキッカケが『何か』はわからないけど…。『少しずつ』…少しずつ『生長』すればいいじゃあないか…。今はゼロでも…その『何か』を探して少しずつ『生長』して…そして、そうすれば…最後に勝つのはそうやって『生長』した人間なんだから…」 そう言ってジョニィは教室を出て行った。 自分の言葉が希望になるかはわからないが…それでも『何か』のキッカケになればいいと願って。 一人残されたルイズは呆然と教室の扉を見ていた。 ───今あいつは何を言ったのだろう。彼の言葉には経験に裏付けされた根拠があった。 笑われるものだと思っていた。見捨てられると思っていた。 だがジョニィはそうしなかった。わたしを認めて励ましてくれたのだ。今はゼロでもいいじゃあないかと。 そう思うとルイズは───ただ嬉しかった。 だが素直になれない性格とプライドの高さが災いして次にでてきた言葉は 「ななな、なによ!つ、使い魔のくせして偉そうに!ま、待ちなさい!」 照れ隠しにそう言うと赤い顔を隠してジョニィを追いかけるように教室をでていった。 ───今日の昼ごはんはちょっと豪華にしてあげてもいいかな。 To Be Continued =>
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「ふんふんふーん♪」 食堂で食後の紅茶を楽しむ少女、ゼロのルイズはご機嫌だった。 今日のデザートは彼女の好きなクックベリーパイなのだ! なにやら食堂の一角が騒がしくなっている気もするが、彼女にとって今は誰にも 邪魔されたくない至高の時間なのである。 使い魔がそっちの方に行ったような気もしたが、当然無視した。 「まったく、あの馬鹿ったら…」 食堂で食後の紅茶を楽しむ少女、香水のモンモランシーは先日の事を思い出して 不機嫌になっていた。 「ギーシュ、ポケットから壜が落ちたぞ」 「おお!その香水はモンモランシーのものじゃないか!」 「つまりギーシュ、お前はモンモランシーと付き合っている。そうだな?」 「ち、違う!彼女の名誉の為に…ケ、ケティこれはその… ヒィ!も、モンモランシー!?違う、違うんだ!」 「ヘイ!ケティ、マスク狩りの時間だ!」 「OKモンモランシー!」 「クロス!」「ボンバー!」 「ウギャー!キン○マ―ン!」 「すまないギーシュ!僕が壜を拾わなければ…」 「いいんだ…それより、誰か僕の顔を見て笑っていやしないか?」 「誰にも…誰にも笑わせはしない…」 「ありがとう…マルコメミソ」 「マリコルヌ!風上のマリコルヌだよ!?」 つまりは、付き合ってる男に二股かけられたのである。 気位の高い彼女には、とてもとても許容しがたい出来事であった。 気位が高くなくても許容できない話だと思うが。 それでも謝られると許したくなってくるのが、余計に腹が立ってくるというかなんというか。 「どうぞ」 そんなことを考えていると、メイドがデザートを机に持ってくる。 当然貴族である彼女が『ありがとう』等と、平民に一々礼を言うわけも無く、 配った彼女を見ようともしないでクックベリーパイを口に運ぶ。 「…ちょっと、そこの貴方」 「え、私ですか?」 ケーキを配ったメイドが、貴族に呼び止められた事に当惑して立ち止まる。 「これ…どういう事?」 シエスタはこれ以上ないというぐらい脅えていた。 目の前の貴族、学生といえど魔法を操り、平民である自分にとって絶対的な存在が 自分に怒りをぶつけているのである。 「申し訳ございません!どうか、どうかお許しください!」 体の震えが止まらない。 「お許しください、ですって? 貴族である私の口に、平民である貴方の髪の毛を入れておいてお許しください?」 「お願いします、どうかお許しを!」 涙が溢れてくる。 平民の自分が貴族に粗相をして唯ですむはずが無い。 周りを見ても、他のメイドは見てみぬフリをし、貴族は何事かと一度は見るものの、 平民が貴族から罰を受けているとわかれば、あとは特に関心をしめさない。 助けなど望むべくも無いのだ。 シエスタにとって不幸だったのは、モンモランシーの機嫌が悪かった事だ。 そうでなければ怒りこそすれ、基本的に野蛮な事を嫌う彼女が『お仕置き』を する事もなかっただろう。 「覚悟はいいかしら?」 魔法の杖を取り出し、残酷に告げる。 「どうか…」 脅えるメイドに、嗜虐心をそそられたモンモランシーが杖を振ると、 メイドの頭上から水が降り注いだ。 「あら、似合ってるじゃない?」 ずぶ濡れになった姿を見て、にっこりと微笑むモンモランシーの姿に、 シエスタは更なる恐怖を覚える。この程度で済むはずが無いのだ。 「あぁ……ぁ……」 「さあ、次は…」 魔法を繰り出そうと杖を振り上げた瞬間、誰かがその腕を掴んだ。 「やめないか!」 育郎が食堂での騒ぎに気付き、駆け寄って見た物は、杖を振り上げる女生徒の前で、 先日世話になったシエスタがずぶ濡れになって震える姿だった。 「な、何よ貴方!?平民が気安く貴族にさわらないでよ!」 女性が抗議の声をあげるが、無視して育郎が尋ねる。 「君は何をやっているんだ!?」 「ハァ?この子の持ってきたデザートにね、髪の毛が入ってたのよ。 粗相をしたメイドにお仕置きして何が悪いのよ?」 「な!?そんな事で…」 「さっさと離しなさいよ!」 モンモランシーが、呆然とする育郎の腕を振り払おうとするが、 掴まれた腕はまったく動かない。 「彼女に謝るんだ」 静かに、だが強い意志を持って育郎の口から出た言葉を、モンモランシーは 鼻で笑って拒否する。 「謝る?何で貴族の私が平民に謝らなきゃいけないの? それに悪いのはこの子の方じゃない」 「君が怒るのもわからないわけじゃない…でもこれはやりすぎだ!」 「な、なによ…」 なんだなんだと、周りの生徒が2人のやり取りに気付く。 「おい、平民が何やってるんだ!」 「あれは…ゼロのルイズの使い魔じゃないか?」 「主人が主人なら使い魔も使い魔だな…」 周りの生徒が騒ぎ出した事により、少し弱気になったモンモランシーが勢いを取り戻す。 「さあ、早く手をはなしなさい!」 しかし育郎は手をはなそうとはせず、モンモランシーを見据える。 「彼女に謝るんだ…」 な…なんなのこいつ!? 生徒達に囲まれても、まったく物怖じせずに自分を見る育郎に、モンモランシーは 恐怖とまではいかないが、言いようのない不安を感じていた。その時、 「君!今すぐその汚い手を、僕の愛するモンモランシーからはなすんだ! さもなくば、このギーシュ・ド・グラモンが相手になってやろう!」 ギーシュは先日の事を謝る為に、愛するモンモランシーを探していた。 ポケットには今月の小遣いの大半をはたいて買った指輪が入っている。 「これを精一杯の愛の言葉と共に渡せば、彼女もきっと許してくれるに違いないさ」 彼は女の子が好きで、特にかわいい女の子が好きで、さらに女好きの家系という 環境で育ち、あとちょっと頭が弱かったりするため、つい二股なんてしてしまったが、 それでもなんのかんの言って、モンモランシーが一番好きなのである。 「モンモランシーならまだ食堂にいたわよ」 彼女の友人の言葉に従って食堂に行って見れば、なんとモンモランシーが平民、 ゼロのルイズが呼び出した使い魔に凄まれているではないか! 当然の如く、彼は愛するモンモランシーを助ける、というよりは相手が平民なので、 どちらかというと彼女にいい格好を見せる為に、前に出たのであった。 「ああ、ギーシュ!」 そんな思惑も見事に的中したようで、不安になっていた彼女が元気を取り戻す。 「聞こえなかったのか?手をはなすんだ…」 彼なりの凄みを効かせて育郎に薔薇の形をした杖を向ける。 「ほ、ほら早くはなしなさいよ。痛いじゃないのよ!」 「あ、すまない」 やっと手をはなした育郎を見て、モンモランシーは先程の不安を思い出し、怒りに震えた。 この平民にどんな罰を与えてやろうか? 平民が貴族に向かって生意気な目を向けてきたのだ… そうだ!ギーシュのゴーレムを使って痛めつけてやろう! 「まったく、貴方にも躾が必要なようね、ギーシュ!」 「ああ、任せてくれたまえ、モンモランシー…」 「とにかく、シエスタさんに謝るんだ」 「そう、このメイドにあやまって」 「ふっ、何がなんだかよくわかんないけど…すまないね、君」 「は、はぁ…」 「………って違うわよ!ギーシュ、貴方も何言うとおりにしてるの!?」 「え、でも君が謝れって?」 「貴族の僕たちが、何故平民なんかに頭を下げなきゃいけないんだ?」 事の経緯を聞いたギーシュがやれやれと首を振る。 「そうよ!大体平民の貴方が私に気安く触れるなんて…」 「そうだ、僕の愛しいモンモランシーになんてことをするんだ? だいたい、そのメイドが悪いんだろう?」 「…だからと言って、ここまでする事は無いだろう」 育郎が呆然とするシエスタを快方する。 うーん、なんだか変なことになってきたぞ? ギーシュの予定では、今頃は格好よく現れた自分がこの平民を叩きのめし、 モンモランシーからお礼のキスでも貰っているはずなのである。 それがこの平民と来たら訳のわからない事を言って、予定とは違う方向に 話が向かっている。 そういえば何で僕がメイドに頭を下げてるんだ?思い出したら腹が立ってきた。 モンモランシーも機嫌が悪くなってるし…よし、ここで一つ良いとこを見せよう! 「モンモランシー…彼の言うとおり謝ってあげてもいいんじゃないか?」 「な、何を言ってるのよギーシュ!」 先日の一撃で頭のどこかが壊れてしまったのかと、驚きながらギーシュを見る。 「ただし、僕に勝ったらだ………『決闘』だよ!!」 オオーッ!と周りから歓声が上がる。 「『決闘』?」 「そうだよ、正々堂々戦い、負けたほうが勝った方のいう事を聞く。どうだい?」 「そんな!?」 おどろく育郎を、脅えているととったギーシュは、調子に乗ってさらに続けた 「貴族から『決闘』を申し込まれたんだ、まさか断るは言わないよな? いや、所詮『ゼロのルイズ』の使い魔…主人同様出来損ないなら、 臆病風に吹かれてもしかたあるまい…」 その言葉に周りの生徒達から笑いが起こる。 「…わかった、受けよう」 「そんな!?育郎さん駄目です!」 育郎が女生徒を止めた時、シエスタの目には彼がおとぎ話の勇者の如く映った。 物語のなかから出てきた英雄が自分を救いにきてくれたのかと。 しかし、時が立つにつれ怖くなってきた。育郎はただの平民なのだ、 それが貴族と『決闘』だなんて…自分のせいで育郎が殺されてしまうかも知れない、 そう思うと先程より強い恐怖が襲ってくる。 「イクローさん、相手はメイジなんですよ!?殺されちゃいます!」 「殺される…だって!?」 驚いた育郎の顔を見ると胸の中が罪悪感でいっぱいになる。 もっとも、育郎が驚いたのは、生命の危険を感じたからではないのだが。 「僕はヴェストリの広場で待っている…逃げるなよ?」 ギーシュがそう言ってモンモランシーと一緒に去っていく。 「私が…私が悪いんです…だからイクローさんがこんな事を…」 ついには泣き出してしまうシエスタ。 「いいんだ…大丈夫だから」 「何が大丈夫なのよ!」 いつの間にか現れたルイズが育郎を怒鳴りつける。 「あんたどういうつもりなのよ、貴族と『決闘』だなんて!? ちょっと馬鹿力だからって調子に乗らないでよ…ほら、一緒に謝ってあげるから」 「それは出来ない…」 「なんでよ!?いい、メイジに平民は絶対に勝てないの! 心配しなくても、誰もあんたを臆病者なんて言わないわよ…」 「…違う」 「な、何が違うのよ…」 育郎にとって臆病者と呼ばれることなど、どうという事は無かった。 シエスタの事もあったが、逃げればルイズも馬鹿にされてしまう、 それが彼に『決闘』を受ける決心をさせたのだ。 「シエスタさん、彼の言っていた広場はどこですか?」 「駄目!?駄目です!」 涙を流しながら必死で止めようとするシエスタをなだめながら、 育郎は近くにいた生徒に広場の場所を聞く。 「何やってるのよ!?やめなさいって言ってるでしょ、ご主人様の命令なのよ!?」 「…それはできない」 「………もう知らない!ギーシュの馬鹿にボコボコにされればいいのよ!!」 走り去るルイズの後姿を見送り、シエスタを他のメイドに任せてから、 育郎は広場に向かった。 果たして、僕はあの力を使わずにすむのか? そう考えながら… 「何か俺忘れられてねーか?いらない子認定されてね!?」 そのころデルフリンガーは言いようの無い不安を感じ、思考がネガティブになっていた。
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目の前の超異常事態に多少放心気味のルイズであったが男がこちらに近付いてくる事に気付き我を取り戻す。 「これは・・・アンタがやった事なの!?」 だがプロシュートは何も答えずルイズにさらに近付く。 「ちょっと・・・ご主人様が聞いてるんだから答えなさいよ!」 「テメー・・・一体何モンだ?オレに何をした?」 「平民が貴族に向かってそんな口の利き方していいと思ってるの!?」 「2秒以内に答えろ……オレに何をした?」 「質問に答えなさい!」 ルイズが怒鳴り散らすがプロシュートは全く動じない。 「ウーノ!(1)」 「ひ、人の話を聞きな――」 「ドゥーエ!(2)」 ルイズは魔法成功率0とはいえメイジ…つまり貴族だ。 平民という存在より圧倒的に上の立場にいると言ってもいい。 だが組織の暗殺チームの一員とし幾つもの死線を潜り抜けてきたプロシュートから見れば「良いとこのボンボン」つまり「マンモーニ」にしか見えない。 そして、その百戦錬磨の暗殺者としてのプロシュートの「スゴ味」が自然とルイズに質問の答えを答えさせていたッ! 「……アンタを召喚したのよ」 「召喚だと…?」 「そうよ、本当ならアンタみたいな平民なんかじゃなく 皆が召喚したようなドラゴンとかを使い魔にするはずだったんだけど何処を間違ったかアンタが召喚されたってわけ」 「その左手のルーンがアンタが私の使い魔になったって印よ」 「左手…さっきの左手の痛みはそれの事か」 だがプロシュートがある違和感に気付く。 (待て…さっきの左手の痛みはいい、それは納得できる…) (だがオレはその左手を何で押さえたッ!?) プロシュートがその答えを得るべく疑問の先へ視線を向ける。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「何ィーーーーーーーーーーッ!!」 「ちょっと…そんなに大声出さなくてもいいじゃない。それに貴族にキス……って何言わせんのよ!」 使い魔の儀式のアレを思い出しルイズが顔を真っ赤にさせるがプロシュートにとっても問題は左手ではなかった。 そう、左手にあるルーンなどどうでもいい。問題は「左手」ではなく「右手」だった。 (バカなッ!?ブチャラティのスティッキィ・フィンガースに切断されたはずの右手がなぜ『付いて』いるッ!?) 「まったく…弟分がお前を引っ張ったその『糸』に救われたぜ」 記憶に映るのはあのフィレンツェ超特急でのブチャラティとの闘い。 「バカなッ!! ブチャラティィイッ!」 (オレの右手はペッシのビーチ・ボーイの糸を殴ったブチャラティの攻撃で確かに『切断』されたはずだッ!) そこまでだ。プロシュートにはそこまでの記憶しかない。いくら記憶を探ってもそれは同じ事だった。 だが地面に激突する瞬間何かの光に包まれたような気がする。 思考を中断し視線をルイズに戻す。 「……テメーの言ってる事はどうやらマジのようだな」 「理解できた?じゃあ早くこの老化を解いてちょうだい」 「断る」 「アンタ…平民、それも使い魔が貴族に逆らえると思ってるの?」 「平民か貴族なんてのはオレたちにとってはどうでもいい、何より使い魔ってのが気に入らねぇ」 「貴族を敵に回してここで生きていけると思ってるの…!?」 「それに使い魔って言っても奴隷とかそういうのじゃなくて主人を守り忠誠を誓うある意味平民にとっては名誉なものよ?」 ルイズが使い魔の事について説明を始める。 が、当のプロシュートは殆ど話を聞いていない。 プロシュートが再び思考を巡らす。だがそれは使い魔になるかならないかという単純なものではなかった。 (どうするか…) 思考の末プロシュートは三つの選択肢を作り出す。 (一つはこいつを殺しここから離脱する事だが…これは駄目だな。 もしこいつの言うとおりここが全く違う世界なら地理が分からねぇしどういうわけか言葉は分かるようだが文字が分からないってのが致命的だ) (二つはこいつを人質にしここから離脱する…これも却下だ。 チビとは言え人一人を無理矢理担いで移動するのは限界があるし何より目立ちすぎる。) (三つは使い魔とやらになったふりをし情報を集める…今の状況下ではこれが最善か…? 殺す事は何時でもできるしやはり何より今は情報が欲しい。それにこいつ…メイジとか言ったがスタンド使いではないようだな。) (スデにグレイトフル・デッドで殴りかかってみたが動揺一つせず汗すらもかきやしねぇ) 自身の状況を正確に把握し最善の策を見出す。それが暗殺者としてプロシュートが生き抜く為に身に付けた事だ。これは当然他のヤツらも持っている。(ペッシ以外だがな) プロシュートのかなり物騒とも言える思考を知らずにルイズが「早くルイズ様の使い魔になるって言いなさい」という視線を送ってくる。 「……大体の状況は理解した」 「そう、それじゃあ早く皆を元に戻してちょうだい!」 「使い魔とやらになってはやる、だが…オレを他の連中と同じと思わねぇ事だなッ!」 ズキュン! グレイトフル・デッドの能力が解除され倒れていた生徒達の老化が解除されしばらくしてコルベールが起き上がる。 「うう……一体何があったのだね?ミス・ヴァリエール。」 「もう大丈夫ですミスタ・コルベール」 「そうか……他の生徒達も大丈夫なようだね、各自教室に戻りなさい。」 生徒達が多少ふらつきながら戻っていく。だがプロシュートは空を見据えたまま動かない。 「ほら、早く戻るわよ!」 (ペッシ…メローネ…ギアッチョ…リゾット…すまねぇな、ボスを倒すと誓ったはずなのにしばらくそっちに戻れそうにねぇ) プロシュートにとって昨日まで一緒に居た仲間が急に遠くに感じられたが、今は状況を少しでも良くする為に前に突き進むしかなかった。 予断だがコルベールのU字ハゲが進行した事は言うまでもない。 戻る< 目次 続く
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「事故死?」 「そ。詳細は分からないけどそのスジの情報だから確かよ。おかげで今朝から『家に戻れ』って家族が うるさくて大変だわ」 「なんで王子の事故死とあんたの帰郷が関係あるのよ」 「はぁ・・・これだからゼロは・・・いいこと? おそらく今回の件で確実にアルビオンは負けるわ。 自分たちの頭か死んじゃったんだから」 「そりゃそうよね・・・ゼロっていうな」 「そうなれば次連中と戦うことになるのはどこ?」 「あ・・・」 そうだ。恐らくアルビオンのクーデターが成功すれば次は間違いなくこのトリスティンが狙われる。 間違っても新政府とトリスティンが和平を結ぶなんてことはないだろうし。 「てわけで家族が戦争になる前に戻ってこいってさ。馬鹿馬鹿しい・・・トリスティンが落ちれば次はゲルマニアなのに」 キュルケの家系はそもそも戦好きだがだからと言って旧来の怨敵に手を貸す必要はない。そう考えているようだ。 「そう、じゃ戻るのね。せいせいするわ。あなたの顔見ないで済むと思うと」 「あら、私は寂しいわよ。頭脳がマヌケなあなたを見れなくなると思うとね」 「なんなら今ここで見れなくしてあげましょうか? 永遠に」 「遠慮しとくわ。それに生きてればまた会えるでしょ、戦場でね」 「いいわ。その時はヴァリエールの名の下に叩き潰してあげるわ」 「私もツェルプストーの名誉にかけて燃やし尽くしてあげる」 そう言ってキュルケは立ち去った。恐らくもう会うこともないだろう。 ルイズ夕方までかかって片づけを済ませいざ自分の部屋に帰ろうとしたところ 「ミス・ヴァリエールですね?」 「そうですが、王国騎士の方が何用で?」 「姫がから勅命を受けてまいりました。城までご同行願えますか?」 「姫様が?」 ルイズは城のアンリエッタの部屋に立っていた。 姫と会うのなんて何年ぶりだろうか。しかしなんで急に私なんかを。 そう考えていると、 「・・・・・おっと。どうやら姫様のお客人が見えられたようです。私はこれで」 部屋から枢機卿のマザリーニが退出した。枢機卿はちらりとこっちを見ると何事もなかったように去って行った。 「・・・姫殿下。失礼いたします」 ドアを三回ノックしてルイズがドアを開けると、 「ああルイズ、よく来てくれました。私のことを忘れていたらどうしようかと」 「姫殿下を忘れる人間などこのトリスティンにいるはずがございません」 「もう、ルイズ。そういう形式ばった呼び方はよして頂戴。あなたにまでそういう態度を取られると悲しくなってしまいます」 「・・・わかりました、姫さま。しかし一体どうしたのですが? 私を及びつけになるなんて」 もしかして私に何か任務を? などとルイズが考えてると 「・・・ルイズ!・・・ひっく、私、私は・・・・」 アンリエッタはルイズの肩を掴んで泣き出したのだった。 「ルイズ、あなたは知らないかもしれないけど、私は・・・アンリエッタはウェールズ様を愛しておりました」 「・・・・・・」 知っていました、といおうとしてルイズはやめた。無粋だと感じたからだ。 「昔よくあなたに影武者をしてもらいましたよね。告白するとあの時私はあの方に会いに行っておりました」 「・・・そうでしたか」 「あの方はいつも私の告白をはぐらかしました・・・そうですよね、私とあの方は所詮・・・」 ひっく、うっくと再びアンリエッタは嗚咽を漏らす。 「今日、ウェールズ様が亡くなったと連絡を受けました」 「・・・・・・・・・」 「事故死だそうです。もとよりあの方は国と命を共にするつもりだとは分かっておりました。覚悟もできてました。 ですが・・・やはり事実を受け止めるのは辛い・・・辛いのです」 「姫さま、好きなだけお泣きなさい。今日だけは・・・今だけは始祖ブリミルをお許しになりましょう」 「ルイズ・・・・・・ルイズゥ~~~~~~~」 アンリエッタは子供のように泣きじゃくった。今まで姫と言う立場上泣けなかった分。ただひたすらに。 それこそ涙を流しすぎて眼がベコベコにならないか心配な位に。 それから一時間ほどしただろうか。泣き疲れたアンリエッタをベットに寝かせ、ルイズは部屋を退出した。 「ミス・ヴァリエール殿」 扉の横には枢機卿マザリー二が立っていた。 「城門までお送りいたします」 「そんな、わざわざ枢機卿様が・・・」 「遠慮なさらずに。どうぞ」 しばらく二人で廊下を歩いていると 「ありがとうございます」 「え?」 「殿下がああやって自分を包み隠さずぶつけれるのはあなたぐらいです。ほんとうにありがとうございました」 「いえ、そんな・・・」 「殿下は今朝ウェールズ皇太子の訃報を聞き、大変ショックを受けておられました。 それこそこのまま気が触れてしまわないか不安なくらいに」 「・・・・・・ウェールズ皇太子は本当に事故死なのですか?」 「アルビオンに潜ませている間者からはそう報告を受けておりますしアルビオン王国からも正式に報告を頂きました」 「・・・そうですか」 「しかし・・・いくつか腑に落ちぬ点はございますがな」 「腑に落ちぬ点?」 思わずルイズは聞き返した。マザリーニはしまったという顔をする。 しかしマザリーニはアンリエッタには絶対に言わない、という条件をつけて話を続けた。 「ウェールズ皇太子が発見されたのは深夜、玉座の間だそうです」 「玉座?」 「最初に発見したのは城の侍従。何かが倒れるような大きな音を聞いて玉座に向かったところそこには」 「ウェールズ皇太子が倒れていた・・・と」 「はい・・・もっとも最初はそれがウェールズ皇太子様だとは分からなかったそうです。 なにせ遺体は巨大な岩に押しつぶされもはや原型を留めていなかったそうですから」 想像してルイズは口にすっぱいものが広がる。王族の死に様にしては酷い部類だろう。 「なぜ深夜に皇太子が玉座にいたのか、また彼を押しつぶした岩石はどこか落ちてきたものか当はまだ何も分かっておりません」 「・・・つまり事故死でない可能性もあり得ると?」 「穿った見方をすればそうなりますな。自殺か他殺か・・・どちらにせよトリスティンとしては渡りに船ですが。 姫にはとても言えませんがな」 「渡りに船? どうしてです、アルビオンが滅べば今度はこのトリスティンが」 「アルビオンはもうレコンキスタに降伏いたしました」 「!」 ルイズの目は驚愕で見開かれる。 アルビオンが降伏? こんなに早く? 「自分たちの主人の凄惨な死に様を見てどうやら残った王族や貴族連中は完全に戦意を喪失されたようで。 これも先ほどアルビオン新政府から連絡を受けました」 「それなら尚更危険じゃないですか!」 「それが外交の不思議なところでしてな。皆殺しなら早く済むことも降伏されると面倒になるのですよ」 相手が最後まで降伏しなければ殲滅の後新政府を樹立し外交なり戦争なりへ進めることができる。 しかし降伏された場合樹立と外交、戦争の間に裁判というものが割って入る形になる。 無論人権など無視して皆処刑してしまえば大して変わらないだろうが、そうなれば外交の道はなくなる。 降伏した相手を皆殺しにする連中が和平を申し込んできても信用できるわけがない。 戦争するにも今の状態でトリスティンゲルマニアを敵に回すのが圧倒的不利になる。 結局正式に裁き、他国の信用を得る必要があるのだ。 「っと、つきましたな。・・・くれぐれもさっきの話はご内密に。いやはや、どうにも今回の件腑に落ちぬ件が多すぎて 私もいろいろと鬱憤が溜まっておりましてな。お許しを」 「いえ、枢機卿様。いろいろと貴重なお話をありがとうございます。姫さまのことよろしくお願いします」 「心得ております。ところで・・・」 マザリーニは足元を指差していった。 「それは、あなたの使い魔ですかな」 ルイズの足元にはいつのまにかローリングストーンが転がっていた。 「きゃっ! あんた見ないと思ったら・・・もう帰るんだからじっとしてなさいよ」 「やはり使い魔でしたか」 「申し訳ございません! なにぶん昨日契約したものでまだ躾が済んでおりませんので・・・」 「ふむ・・・」 マザリーニはじろじろと岩を眺める。が、すぐにルイズに向き直った。 「いえいえ、使い魔なら構いませぬ。魔法学園までは馬車を準備してますのでお気をつけて」 ルイズの乗った馬車を見送りながらマザリーニはさっきに岩について考えた。 似てるのだ。今日報告のあったウェールズを押しつぶした岩石と特徴が。 昨日契約したという話だしまぁ偶然だろう。 そう思い城へと戻ろうとしたマザリーニはあることに気づく。 「はて? ルイズ殿は使い魔を馬車に乗せられたのだったか?」 振り向くと岩はどこにもなかった。いつの間に・・・と思ったがマザリーニはそれ以上考えるのをやめた。 ルイズは学園に戻ると礼拝堂に向かった。 せめてウェールズ皇太子に冥福を祈ろうと思ったからだ。 「・・・・・・・・・」 ルイズは手を組み瞑想する。今日はいろいろあった。 しかし・・・ウェールズは本当に事故死なのだろうか? マザリーニの話を聞いたルイズは彼の死に疑問を持った。 ウェールズには彼女も何度かあったことはあるが、彼は貴族の、王族の鏡のような人だった。 決して国民を捨てて死を選ぶような人ではない。 だとすれば・・・やはり。 「・・・・・・・・・彼は運命を受け入れただけです。『死』は彼のすぐ側までやってきていた。 だから彼はその運命を受け入れたのです」 「!!」 誰もいない礼拝堂から声が響く。 いや、いないわけではなかった。暗い礼拝堂の奥に誰かがいた。 「人は運命には逆らえない・・・彼も私も・・・無論君もね」
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どうやら貴族というものは自分で服を着るという概念はないようだ。 ルイズを着替えさせながらそう思う。目が覚めるとまず私に驚く。私が召還された使い魔だと思い出すと突然、 「服」 と言い出す。まったく貴族という奴は皆こうなのか? ルイズとともに部屋を出る。すると別の部屋からも誰か出てくる。 赤い髪で褐色の肌を持つ女だった。ルイズより背が高く顔の彫りは深い。バストは大きくブラウスのボタンを外し強調されている。 彼女はこちら見ると薄く笑う。 「おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズは嫌そうに挨拶を返す。彼女の名前はキュルケというらしい。 「あなたの使い魔って、それ?」 キュルケはこちらを指差すと馬鹿にした風に言う。 「そうよ」 ルイズが意地になって言う。 「あっはっは!ほんとに人間なのね!すごいじゃない!」 やれやれ、貴族というのはこんなのばかりなのか。 まぁ、生活の苦労を知らなければこうなるのは当たり前かもしれないな。 生まれたときから人の上に立ち、甘やかされて育ったのだろう。 ルイズとキュルケが話しているとキュルケが出てきた部屋から赤く大きなトカゲのような生物が現れた。 そこにいるだけで周辺の温度が上がる。 何だこれは? それが顔に出たのだろう。キュルケが笑いながら説明する。どうやらこの生物は火トカゲというらしい。これが彼女の使い魔でフレイムというらしい。 火竜山脈とかいう場所の火トカゲでそこの火トカゲはブランドものらしい。きっと見た目と強さに定評があるのだろう。 「それであなた、お名前は?」 キュルケが聞いてくる。 「吉良吉影だ」 「キラヨシカゲ?変な名前」 そりゃこっちの人間からしたら変だろうな。 しかし目の前で言わなくてもいいものを…… 「じゃあ、お先に失礼」 そう言うとキュルケとフレイムは去っていった。ルイズは悔しいのだろう、文句を言っている。 そういやさっき彼女はルイズを『ゼロのルイズ』と言っていたな。召還されたときも誰かがそう言っていた気がする。 ルイズは私を召還したときに随分と馬鹿にされていたようだ。さっきもそうだ。そこには『ゼロのルイズ』という単語が出てくる。ルイズの あだ名なのだろう。 そういえばルイズは魔法を使ってないな。それが関係しているのだろうな。 ルイズが落ち着いたところで食堂に行く。食堂には大きく長いテーブルが三つ並んでおりテーブルには豪華な飾り付けがしてある。 いかにも「私たちは金持ちだ」見たいな感じで呆れるな。料理も朝から豪勢だ。こいつら胸焼けしないのか? 「椅子を引いてちょうだい」 ルイズが言う。椅子を引いてやる。 するとルイズが何か渡してくる。スープだ。そして皿の端にパンを二切れ置く。 「あんたの朝ごはんよ。私の特別な計らいで床で食べていいわ」 そういえば人間は食事を取らないといけないんだったな。理不尽だが我慢する。 少しの辛抱だ。こんなな小娘の言うことを利くのは情報を得るためだ。自分に言い聞かせる。 なにやら祈りが唱和される。こいつらにとってこれがささやかな糧か。早死にするぞ。 5へ
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渡り廊下のほど近くに倒れた男へ向かい コルベールが寄ってくる そしておもむろに杖を振り上げた あわてるのはキュルケだった 「ちょっと、何をなさるおつもりッ!?」 「決まっているでしょう、殺すのですよ 彼…『この存在』は危険すぎる」 「バカなことをッ!! これなら充分、生け捕りにできるじゃありませんのッ」 生徒にあるまじき態度でくってかかるキュルケ 一応、敬語を使ってはいるが ガンバりを無駄にされて笑っている趣味はないッ だがコルベールも引き下がらなかった 「タダの使い魔であればそれも良いでしょう しかし、これはあまりに得体が知れないッ おまけに出てくるなり危害を加えたならば 皆を監督する者として、こうする以外にありませんッ」 スジは通っていた 出てくるなりいきなり殴りかかってくる使い魔など前代未聞だった 危険な生物を召喚してそのまま放っておき続ければ あるいはそんなに不思議なことでもないかもしれないが それでもキュルケは食い下がる 「ですが、あれは平民ですわ、ミスタ・コルベール」 「それこそバカなことではないのかな? 本気で言っているのかね?」 「………」 黙るしかなかった あんな平民がどこにいる? だが、それでも 今、目の前で折れた足をかばっている男は理性ある「人間」だ 最後の方、攻撃を明らかにためらったことに気づいていたキュルケである そこに火球を浴びせかけて反撃せざるをえないように追い込んだのだ そうしなければ、男は戦いをやめ、どこかに逃げるなりしていただろう 最初に暴れたワケは不明なままだが とにかくキュルケは確信していた それを言おうと口を開くがコルベールに先手を打たれた 「それに、だとしたらますます存在を許すわけにはいかない 貴族を殴り、使い魔を山ほど傷つけた そんな平民が生きていられると思うのかね?」 もっともだ もっともすぎる これほどハデにことが起これば隠蔽など不可能 人間と認めたら認めたで、かばいようがないッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「つまり、『これ』には死刑判決以外ありえない」 コルベールは厳粛だった そして振り向く この真なる当事者に 「良いですね、ミス・ヴァリエール」 ビクッ ぐずりながら見守っていたルイズは肩を震わせる 何を言われたか そのくらいは理解していた 「気に病むことはありませんよ これは事故なのです あなたには何の責任もない これを始末した後で、また儀式をやり直しましょう そのくらいの時間はとってあげられます」 「……」 (…そうだわ これは事故なのよ 私には何も責任ない こんなところに出てきた平民がおかしいのよ) くじけた心はまたたく間にルイズに『弱い考え』を植え付けた (私は「ゼロ」じゃない だから、あんなの私が呼ぶわけがない これは何かの間違いなのよ そうに決まってるのよ…) ルイズは、コルベールに向かってうなずいてしまった 死刑の執行許可書にサインしてしまった (…見ッ下げ果てた奴ッ アンタ、やっぱり「ゼロ」だわ、ルイズ) キュルケが苦虫を噛み潰す横で コルベールが呪文の詠唱を始める 足を折られた元・鳥の巣は、なんとなく置かれた状況を理解した ナニゴトか唱えた後で炎が飛んできたり地面が固まったりしてきたのだ どうやらこのハゲは自分を殺す気らしいぞ そう思ったらしい 最後の抵抗を試みたようだ 「DORA!!」 ボコァ 見えない手が掘り返した土くれがコルベールに投てきされる ボグォム 「―― ぐはッ!?」 至近距離からのレーザービーム送球ッ!! 単なる土くれだったがスピードがシャレにならない 下腹部に直撃されたコルベールは呪文を中断して咳き込むことになる そして彼は男が闘志をあらわに睨み付けていることに気づくのだ 「…恐れることはない、私にも情けはあるさ 苦しませはしないよ…『炎蛇』の二つ名にかけてなッ」 『火×1』 正面からが駄目ならカラメ手だった 男の前後左右から迫り来る、文字通り炎の蛇ッ ススス ドヒャ! ドヒャ! のけぞって逃れようとする男の顔へ容赦なく飛びかかり 口をふさいで巻き付いたッ ゴゴゴォ チリ…チリ… 「Go…aa!!」 振り払おうと身体を激しく振るう男 見えない手もさかんに振り回されているようだ だが蛇は炎の塊でしかない つかめるものが何もない 白目をむくッ!! 炎を呼吸して肺を焦がすか 顔を焼かれたまま長い窒息の苦しみの果てに死ぬか 非情な二者択一をコルベールは迫ろうというわけだ 「早く受け入れたまえ…そっちの方が、楽だぞッ」 「Gaooa…DORAa!!」 バコォ ようやく「自分の顔を殴って脱出」という方法に思い至った男だったが その力は予想を越えて貧弱だった 炎の蛇が振り切れないッ 「なるほど、君自身の生命力に依存する力かね… 死にそうになればなるほど弱っていくわけだ 正直、興味深いよ だがね、生徒達の安全には変えられないんだ わかってくれるね」 這って渡り廊下までついた男だったが そうしたところでどうにもならない どうにかなりそうなモノも見当たらない 「王手の詰み」(チェックメイト)にハマッたのだ 「では、死…」 ゴッバォオーz_ ン その爆発は、トドメに刺された一撃ではなかった コルベールに使える魔法では、無いッ!! なにっ!? たったひとつの心当たりを見てみれば、 やはり、だがなぜ…ゼロのルイズが魔法の杖を掲げ、振り下ろしていた 「…これは一体、何のマネだね ミス・ヴァリエール」 今ので吹き飛ばされた男は全身、服がミジメなことになりはしたが まとわりついた炎の蛇もまた、どこかに消え失せてしまっていた 肩で息をして返事をしないルイズに、コルベールは再び問う 「…何のつもりだねッ!!」 ゼェ…ハァ… ルイズは少し呼吸を整え、答えた ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「儀式は途中です、まだ終わっていません」 「どういう意味だね、言っていることが少し、わからないのだが…」 「契約を続けるんですッ!! そこの、私の使い魔とッ」 ルイズは実家の家族達を思い出していた キビシイ父、キビシイ母、それにキッツイ長女ッ 魔法がマトモに使えていないことでだけでも 自分の頭をカチ割りたくなるような追及を受けまくっているのに そこへ今回の話がいったらどうなる? 予想どころではないし考えたくもない だが (ちい姉さま…) 次女カトレアはルイズに優しいのだ 怒られてばかりのルイズをなぐさめ励ましてくれたのはいつも「ちい姉(ねえ)」だった 今この瞬間だって絶対にそうだろう 父と母と長女の態度がつらくても、ちい姉さまがいるから頑張れる もちろん、今回のこれを聞かせることになると思うと泣けてくる しかしッ (呼び出した使い魔を見捨てて… そんな私に、ちい姉さまは笑ってくれるの…?) 答えはNOだッ ルイズの中のちい姉さまは許さないッ (ちい姉さまに会いに行くのに、イチイチおびえなくちゃいけないようになるなんて… 顔を見るたび、オドオドしなきゃいけないようになるなんて… 私はイヤよ、絶対にッ!!) だが考えてもみる あの使い魔はイキナリ暴れて大変なことをしでかした 今は死刑宣告をくらって執行されようとしている そんなものと一生寄り添って、どうするつもりなのだ? 新しく使い魔を呼んだ方が… (使いこなしてみせるわよ) そんな弱音は握りつぶしてみせるッ (ちい姉さまがたくさんの動物を手なずけるようにッ そうすれば…私は「ゼロ」じゃ、ないッ!!) ルイズは男の前に立ち、両腕を広げた 今まさに攻撃を再開しようとしているコルベールから、男を守るようにッ 「…セ・シ・ボン(結構だわね)、ルイズ」 一時は自分が彼の身柄を買い取ってしまおうかとまで考えていたキュルケだったが 進み出たルイズの姿にヒュウッと軽く口笛を鳴らした 「言いたいことはわかりましたよ、ミス・ヴァリエール」 杖は下ろさないまま、コルベールは言う 「あなたは全部、責任が取れるというのですね? 使い魔や衛兵の治療代に、貴族子弟を危険にさらした賠償金、全てをッ」 「……」 「使い魔が噛みついた責めは、全てその主にあるッ わかっているというのですねッ?」 「…わかっていますッ!!」 「安請け負いをす…」 コルベールはその先を続けることができなかった 渡り廊下が突然、崩れ始めた 原因は明白ッ ルイズの起こした爆発以外にあるものかッ グラァ ドドガァ 男はもとより 前に立ったルイズももろともに下敷きだッ!! ガラ ドォォ ズズン 砂煙が収まった後が見えてくる 男は無事だった あの正体不明の見えない力で防ぎきったものだろう だが、もう一人は かばったために一緒に巻き込まれたルイズはッ 「ル、ルイッ…」 キュルケをはじめとした、クラスメートの何人かが顔を真っ青にした ルイズは横倒しに、瓦礫の下敷きになっていた 肩から上は外に出ているが その下から赤い水溜まりが見え隠れ…大きくなっていた 「ガレキを全部、上に…魔法、使いすぎてるッ 魔力足りないのよッ…… タバサァァーッ 何ぼさっと見てんのォォーッ!!」 「……」 タバサは片手で杖を振り上げ『風×2』を器用に行使する 突風で瓦礫のみを取り除く、おそるべき精密性であった しかし、そうやって重みから解放されたはずのルイズは 「………」 どこからどう見ても、手遅れだった 血溜まりの直径が1メイル近かった まもなく死ぬだろう 誰もがそう思った だから そんな彼女に膝を引きずって近寄っていく男が何をする気なのか 誰も大して気にしていなかった …そして ズギュウウゥゥゥン 「え…」 「あ、あれ?」 逆再生のビデオそのものという、 この世界の誰もが見たことのない光景に、 全員、息を呑む…どころか反応できなかった 崩れ落ちた渡り廊下が全て元通りになってゆき… 横たわるルイズの下には、血溜まりなど、どこにも無かった 「…何、が?」 コルベールが二回、目をこすったとき、 男…元・鳥の巣はその場にグッタリ倒れ伏した 結局のところ、残されたのは謎だけだった 男が再び目覚める、そのときまでは… 6へ
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几帳面な性格をしているために、先に聞いてきた向こうの質問に答えた形兆だったが、 こっちが答えたのだからあっちの方も答えるだろう。という彼の期待はあっさり破られた。 「ニジムラ ケイチョウ? 変な名前」 そう言ってはげ頭の中年の男の方に振り向き、何か話し始めた。 召喚のやり直しやらこれは神聖な儀式であるのでそれは出来ないなど、よく分からない事を話している。 まだ少し混乱している頭で自分はどうなっているのか、お前も自分の名前くらい言え、 などと言ってみたが無視された。 それにさっきから周りの奴らの笑い声が聞こえてくる。 どうなっているのか分からなくなり頭を抱える形兆だったが、そこであることに気づいた。 自分は生きている。 確かに自分はあの時死んだはずだ。それは確かなことだった。 だが自分は今生きている。これも確かなことである。 自分が生きているのか分からない、こんな状況は初めてだ。 「バッド・カンパニー!」 警戒してスタンドを出そうとする、だが何も起こらない。 自慢の軍隊が出て来ないのだ。アパッチや戦車はおろか、歩兵の一人も出て来ない。 やはり自分は死んだのだろうか?そうするとここは地獄か?だが地獄にしては綺麗な所だ。 不審に思いさっきよりも目を凝らして周りを見渡し事態を把握しようとする。が、 「あの平民なにを叫んだんだ?」 「イカレてるんじゃあないか?」 「ゼロのルイズの使い魔だしな」 不審に思われているのは自分だった。 周りを観察しながらこれがどういうことなのか考えているうちに 自分名前を聞いてきた桃色の髪の女がこっちにやってきた。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 そういって手に持っていた杖を振る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 「それがお前の名前か?」 「五つの力を司るペンタゴン」 「ペンタゴン?アメリカ国防総省のことか?」 「この者に祝福を与え」 「祝福?ありがとう、と言えばいいのか?」 「我の使い魔となせ」 「使い魔?魔法使いみたいなことを言うな?」 几帳面にルイズの言葉に反応を示す形兆。偶然だが半分は正解を言い当てている。 次は何を言われるんだ?そもそも何を言っているんだ? 少々混乱しながらも形兆がそんなことを考えていた次の瞬間! キスをされた。 完全に不意打ちをくらった形兆は驚き、ルイズから顔を離しさらに距離をとって身構える。 「何のつもりだ?ルイズ」 当然の疑問。だが、 「呼び捨てにするんじゃないわよ!ご主人様でしょ!」 (どうしてコイツはおれの話を全く聞かないんだ?そもそもご主人様って何だ?) 几帳面な分突発的な出来事に強くない形兆は混乱の度合いを強くする。 そして形兆が次のことを考えようとして、急にきた体の熱さに邪魔された。 「なにィ~~~スタンド攻撃かッ!?」 「騒がないで、『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」 「『使い魔のルーン』だと!?」 それで自分に何をしたのかを聞き出そうとした時、熱は無くなった。 (一体何なんだ?分からない事が多すぎるぞッ!?) 混乱だけが強くなっていく形兆に追い討ちを掛けたのは責任者らしき中年の男だった。 「フーム……珍しいルーンだな。 よしじゃあ今日は解散!みんな良くやった!」 そういってその男は『飛び』去っていく。周りにいた者もみな飛んで城のような建物の方へ行く。 それをみて形兆は 「一体どういうことだ?」 としか言えなかった。 もう何がなんだか分からなかったが、 あの中年の男の態度や使い魔という単語から自分に危害を加えることは無いだろうと判断し、 何故か未だに残っている自分の唇を奪った女に話しかけた。 説明しろ。と To Be Continued ↓↓
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